いつも、雨
「せやし、そう言うてるやん!バターロール焼いたってば。」


「……お前……すごいな。」


孝義は、心底、まいらに感心していた。




「や。ほんまに簡単やねんて。ここ、小麦粉もバターも、到来ものがいっぱいあるし、それ、使ったよ。コーヒーも、お中元、あけた。食べよ。」

「ああ。」


まいらに促され、孝義は食卓についた。



純和風な漆黒の座卓に、焼き立てのバターロールと桃とコーヒーと……やや茶色がかった緑色のスムージーが並べられた。


簡単なメニューに見えたが、パンもスムージーも、孝義の予想をはるかに超越していた。



「……なにこれ。めっちゃうまいやん。」


素直な感想に、まいらは満面の笑みを浮かべた。


「ほんま!?よかった!!わーいわーいわーい!」


「ほんまほんま。焼き立てやし?……マジうまいわ。何もつけんでも、うまいわ。なんぼでも食えるわ。」


言葉通り、孝義はバターロールをパクパク食べて、平らげてしまった。



自分の分のパンも孝義に食べられてしまったけれど、それでもまいらは幸せいっぱいになった。









8時半。

孝義が出勤するのにくっついて、まいらもお勉強セットを抱えて出た。



8時45分から、孝義は全職員の集まる朝礼にゆく。

まいらは、孝義の執務室に入り込み、宿題に取り組み始めた。



9時には孝義が部屋に戻ってきた。


特に会話を交わすこともなく、孝義は仕事に、まいらは勉強に没頭した。



10時に綺麗な女性が、孝義にお茶とお菓子を持ってきた。


「失礼します。……え……。」 


まいらの存在に気づいた女は、絶句した。



……なるほど。

このちょっと化粧の濃い美人のお姉さんも、孝義くんの後妻候補なのか。




まいらは黙って成り行きを見守った。


「ああ。ありがとうございます。俺はけっこうですので、彼女にお出しして差し上げてください。……まいら。いただきなさい。」


鷹揚に孝義はそう指示した。


「ありがとうございます。いただきます。」


素直にまいらはそう言って、にっこりと笑顔を見せた。



美人は、鼻白んで、小さな舌打ちをこっそりして、まいらにお茶とお菓子を出した。
 

それから、孝義に、笑顔を作って見せた。


「猊下にもすぐ、お持ちいたしますね。」 
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