いつも、雨
10分ほど待ってから、まいらは諦めて、孝義の部屋を出た。
すぐ先の廊下で、すっかり冷めたコーヒーと生ぬるく溶けた水菓子を持って、読モ女がまいらを睨んで立っていた。
……なるほど。
これも嫌がらせ、か。
めんどくさいなあ。
まいらは、会釈だけして通り過ぎようとした。
「せっかくお持ちいたしましたのに……。」
恨みがましくそう言われてしまった。
まいらは、仕方なく、殊勝な顔を作って頭を下げた。
「ごめんなさい。夕食の準備があるので、私はお先に失礼します。もったいないので、そちらは、お姉さんが召し上がってください。では、失礼します。」
背後でなにか聞きたくないようなことばが聞こえてきたが、まいらは無視して、足を早めた。
ここはまるで、魑魅魍魎の伏魔殿だ。
母の希和子がどんな想いをしてきたのか……考えると、泣きそうになった。
いや。
孝義だって、そうだ。
今でこそ、みんなが孝義の機嫌を取る状況に落ち着いたが、妻が亡くなるまでは、四面楚歌だったと聞いている。
まいらは、こみあげる涙を振り払った。
泣いてる時間はない。
夕食のお買い物と準備にかからなきゃ。
まいらは、早速、叔母の由未に電話をかけて、献立の相談をした。
料理上手の由未は、何よりも心強い味方となった。
そんな風に、まいらの夏休みは、楽しいことばかりじゃないけれど、やりがいのある、充実したものになった。
********************************************************************************************************
毎年8月に入るとすぐ、天花寺家では遠祖の法要がある。
年々参列する姻戚は減っているが、今年も恭匡は本家の当主として完璧に執り行った。
古刹の本堂での読経と説法のあと、何とか残存する千年前の供養塔前での法要。
真夏の暑い盛りでなければ、楽なのだが……こればかりは、日にちをずらすこともできない。
今年も、うだる暑さにしたたり落ちる汗を拭いながら、領子は参列した。
さすがに老齢の身には堪える。
最近よく医者から不整脈を指摘されるのだが、今も動悸が気になり、そっと胸を押さえた。
すぐ先の廊下で、すっかり冷めたコーヒーと生ぬるく溶けた水菓子を持って、読モ女がまいらを睨んで立っていた。
……なるほど。
これも嫌がらせ、か。
めんどくさいなあ。
まいらは、会釈だけして通り過ぎようとした。
「せっかくお持ちいたしましたのに……。」
恨みがましくそう言われてしまった。
まいらは、仕方なく、殊勝な顔を作って頭を下げた。
「ごめんなさい。夕食の準備があるので、私はお先に失礼します。もったいないので、そちらは、お姉さんが召し上がってください。では、失礼します。」
背後でなにか聞きたくないようなことばが聞こえてきたが、まいらは無視して、足を早めた。
ここはまるで、魑魅魍魎の伏魔殿だ。
母の希和子がどんな想いをしてきたのか……考えると、泣きそうになった。
いや。
孝義だって、そうだ。
今でこそ、みんなが孝義の機嫌を取る状況に落ち着いたが、妻が亡くなるまでは、四面楚歌だったと聞いている。
まいらは、こみあげる涙を振り払った。
泣いてる時間はない。
夕食のお買い物と準備にかからなきゃ。
まいらは、早速、叔母の由未に電話をかけて、献立の相談をした。
料理上手の由未は、何よりも心強い味方となった。
そんな風に、まいらの夏休みは、楽しいことばかりじゃないけれど、やりがいのある、充実したものになった。
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毎年8月に入るとすぐ、天花寺家では遠祖の法要がある。
年々参列する姻戚は減っているが、今年も恭匡は本家の当主として完璧に執り行った。
古刹の本堂での読経と説法のあと、何とか残存する千年前の供養塔前での法要。
真夏の暑い盛りでなければ、楽なのだが……こればかりは、日にちをずらすこともできない。
今年も、うだる暑さにしたたり落ちる汗を拭いながら、領子は参列した。
さすがに老齢の身には堪える。
最近よく医者から不整脈を指摘されるのだが、今も動悸が気になり、そっと胸を押さえた。