いつも、雨
……そう……これは、自業自得なのね。


このまま、死んでしまっても、しかたないのね。


わたくし、それだけのことをしてしまったのだわ。 


長い長い年月分の罪の報いなのね……。





領子は、すべてを、あきらめてしまった。


意識を手放した領子は、ぴくりとも動かなくなった。






「おばさまっ!?大丈夫ですか!?おばさまっ!」

「あかんて!救急車!携帯!電話っ!」

「由未ちゃん!おばさま、呼吸、変!どうしよう!」

「どうもこうもない!救急車呼ぶから、心臓マッサージ!人工呼吸!何でもしてっ!」

「ええええええっ!おばさま~。ごめんっ!死なないで~!!!」




こういうとき、恭匡はオロオロしているばかりで、ほとんど役に立たない。

それがわかっているので、逆に由未は素早く動けるようになった。



すぐに救急車を呼び、同時に、応急処置を教わると、茶室に駆け戻った。




案の定、恭匡は領子を掻き抱き、子供のように泣きじゃくっていた。


「どいて!」


由未は、恭匡を領子から引き剥がすと、まずは領子の帯を解き、腰紐をほどいて、着物をはだけさせ、長襦袢の紐も緩めた。


それから領子の左胸に耳をあて、心音を確かめる。


全く無音ではないものの、鼓動と言うには、たどたどしすぎる。

それは呼吸も同じ状態で……。



由未は、覚悟を決めて、見よう見まねの、胸部圧迫を始めた。

いわゆる心臓マッサージだ。


……マッサージと言うには荒々しいけど……これ、肋骨折れちゃったりしないのかしら……。



それにしても、おばさま……お婆さんなのに、なんてまろやかなおっぱい……。


なるほど、父の要人が人生をかけて愛し続ける女性は、未だにこんなにも魅力的なのかと、由未は妙に納得してしまった。




ぎゅーぎゅーと、領子の胸を押し続けていると、やっと救急車が到着した。



あとは専門家に任せて……と……。



「恭匡さん、甥っこやから、救急車乗って。付き添って。私、ご家族に連絡してから、戸締まりして、追いかけるから。」


由未にそう指示されても恭匡はさめざめと涙を流しながら、首を横に振った。 


「無理~。由未ちゃん、一緒に来て~。僕だけじゃ、どうしたらいいのか……。」
< 634 / 666 >

この作品をシェア

pagetop