いつも、雨
一命を取り留めたとは言え、事態は深刻だった……。


右冠動脈が完全に詰まったものの、吸引とステントで、何とか持ち直したそうだ。


しかし心臓の左心室の40%ほどが、既に壊死していたらしく……医師から逆に、ここ最近、心筋梗塞を起こしていないか、異変がなかったかを尋ねられた。



「壊死……ですか……。……心臓が?……壊死?」


「……えし……。」



医師の言葉が理解しきれず、百合子は首を傾げた。


……壊死って、血が流れなくて細胞が腐ってしまうこと、……だったと思うんやけど……心臓も腐ってしまっても……人間って生きていられるものなんだ……。


お母さま、何もおっしゃらなかったけれど……お苦しかったのかしら……。


でも、いったい……いつ?




家族の誰にも、そして要人にも、ハッキリと、この時だろうと言うことはできなかった。




……独りで苦しんでおられたのだろうか……。


要人は、思わず自分の左胸を押さえていた。



代われるものなら、代わってさしあげたい……。





「あの、それで、心臓の一部が壊死してしもてるんは、もう、仕方ないとして……これから、どうなんですか?命の危険は、もうないんですよね?」


一夫の問いに、医師は言いにくそうに言った。


「とりあえず、現在は落ち着いてらっしゃいますが……統計的にも、予後を楽観視することはできないでしょう。今回の心筋梗塞で右の心筋も壊死しますので……そうですね……心臓の機能がこれまでの半分以下しか働かないとお考え下さい。その分、日常生活にも支障があるでしょうし、合併症の危険性も高くなります。……現在はまだ見られませんが……肺に水がたまったり、……心不全を起こしやすくもなります。……次の発作が起きたとき……正直なところ、延命の処置が可能かどうか……。」




恭匡が、机に突っ伏して泣き始めた。


要人もまた、机に両手をついて、なんとか身体を支えるのが精一杯だった。






しばらくして、家族はCCU(心疾患集中治療室)での面会を許された。


領子は、ぐったりしているものの、目は開いていた。


さすがに要人は遠慮して入室しようとしなかったが、強引に、一夫に腕を引っ張られ、領子の目の前まで連れて行かれた。




領子の唇がかすかに開いた。


「……たけはら……。」

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