いつも、雨
「……お気持ちはありがたいですが……まずは、領子さまご自身のお身体が万全になってからにいたしましょう。無礼な子供の心ない言葉で、また傷つかれては、元も子もありませんから。」


なぜか、ずっと付き添っている要人にそうたしなめられた。


「覚悟していますから、大丈夫ですわ。……ところで、竹原?……あなた、どうして、ここにいらっしゃるの?……うちのものは……?」


もっともな質問だった。


要人は、言葉を選んで説明した。


「面会時間になれば、いらっしゃると思いますよ。みんな、領子さまのことを心から心配しておりますので。……私は、付き添いです。この部屋に泊まる許可もいただきました。ずっとおそばにおります。」



「ずっとって……。会社は?」



ふっと、要人はほほえんだ。


「辞めました。」


「は?……何……仰ってるの?」


領子は、耳に手を当てた。


要人はその手をそっと取って、骨の浮き出た白い甲にそっと口づけた。



それから、おもむろに繰り返した。


「辞めました。会社にはもう参りません。家にも帰りません。これからは、ずっと、領子さまのおそばにおります。」



「……家のものを……呼んでください……。」

ふるふると、領子は震えていた。



要人は、その手を弄びながら、笑顔で応えた。


「面会時間になれば、いらっしゃいます。……それより、相談したいことがたくさんあります。これからご一緒に住む家ですが、」

「わたくしの家は、一夫さんの建ててくださった、あの家です。竹原と住むつもりは、ありません。」


領子の拒絶に、要人は肩をすくめた。


いつもなら心が折れているところだが……もう、時間がない。


ここで引き下がるわけにはいかない。



要人は、敢えて笑顔を作った。




「……竹原?」


何を言っても、要人は動じる様子を見せなかった。



のれんに腕押しだわ。

領子はため息をついた。


「もう、いいわ。どういうおつもりか存じませんが……わたくしは、どうあっても、一夫さんと離婚いたしませんし、竹原と住むつもりもありませんので。そのおつもりでいらしてください。」



要人はゆっくり首を横に振った。


そして、噛んで含めるように言った。


「素直になりましょう。領子さま。こんな不自然な関係は終わりにしましょう。……私たちは、一緒にいるべきだ。……意地を張らないで。」                                                                                             
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