いつも、雨
ほどなく、百合子が見舞いにやってきた。
「ごきげんよう。……お母さま……落ち着かれたようですね。……よかった……。」
頬に血色が戻り、笑顔を見せた母に、百合子は面食らった。
要人の存在が、いかに母にとって大きなものかを、まざまざと見せつけられたような気がした。
……やはり、この男に託したほうが、お母さまは幸せなのだろう。
家族として淋しい気持ちはあるものの……要人を実の父親と認めさえすれば、それはとても自然なことだと理解できた。
「ありがとう。心配をかけました。もう、大丈夫よ。……一夫さんは?お仕事かしら?……夜に、いらっしゃるの?」
領子にそう問われ、百合子は言いにくそうに答えた。
「……いえ、お継父さまは、来ないそうです。……お母さま……お継父さまは、離婚届をもらってらっしゃいましたわ。」
「そんな……。」
領子は、思わず左胸に手を当てた。
鼓動を強く感じる。
ふわりと、背中が温かくなった。
要人が、領子の背をさすっていた。
すぐに領子は、落ち着きを取り戻した。
「……それから……夕べ、恭匡さんと由未さんが、まいらちゃんとお話しされたそうです。……たぶん、そのうち、こちらに来てくださるんじゃないかしら……。」
「恭匡さんが……。」
甥は、責任を感じているのだろう。
……恭匡さんは、何も悪くないのに……。
黙ってしまった領子に代わって、要人が力強く言った。
「わかりました。恭匡さまにお礼申し上げます。……孫が来たら、洗いざらい、話します。理解しろとはとても言えませんが、孫が納得するまで、話すつもりです。」
「……そうしてさしあげてください。」
百合子は、ほっとしたように、ほほえんだ。
その日も、翌日も、まいらは来なかった。
……やはり、まだ怒っているのだろうか……。
口には出さないものの、領子も不安が募っているらしい。
要人は、これからの2人きりの生活の夢を領子に語り続けた。
なんとなく洗脳されて、領子もその気になりつつあった。