いつも、雨
お盆が過ぎて、いよいよ領子の退院が明日に迫った夜、孝義に連れられてまいらがやってきた。
まいらは、苦虫を噛み潰したような顔で、無言で頭を下げたまま、ムスッとしていた。
「やあ。孝義くん。久しぶりだね。……長らく、孫を預かってくれて……本当に、お世話になりました。ありがとう。……今日も、まいらを、ここに、連れて来てくれて、ありがとう。」
要人はまず孝義に感謝を伝えたあと、孫のまいらに謝った。
「まいら。すまなかった。」
言葉は簡潔だが、要人は深々と頭を下げた。
「まいらちゃん。ごめんなさい。」
領子もまた、シーツにつきそうなぐらいに頭を下げた。
まいらは、困ってしまった。
「やめて。そういうの。……もう、いいから。……身体に障るといけないから。」
2人が頭を上げるのを待って、まいらはボソボソと言った。
「いっぱい聞きたいこともあったし、文句も言いたかったんやけど……もう、本当に、いい。」
精一杯の言葉だった。
いまさら、何も言えるわけがない。
こんなにも、イイ表情の祖父を観たことがない。
おじいちゃんなのに……私のおじいちゃんのはずなのに、色気だだ漏れだ。
まるで他人のように感じて、まいらは、多少ねじくれた。
そして、ついつい意地悪を言ってしまった。
「……てゆーか、私が反対しても、無駄やろ?……もし、それでも、私が、許さないってゆーたら……おじいちゃん、おばさまを諦められるの?」
「こら!まいら!」
孝義が慌てて窘めようとしたが、まいらの口から飛び出した言葉はもう戻らない。
強がって、まいらの口がへの字に結ばれた。
要人は領子と顔を見合わせ、それから、ふっと笑った。
余裕綽々な態度に、まいらは苛立ちを募らせた。
しかし、要人の返答は、まいらの想像もしなかったものだった。
「……うん。……領子さまと相談したのだが……そのときは、2人で死ぬことにするよ。」
「はあっ!?」
「心中……ですか……。」
さすがに驚いた。
しかも、冗談ではないらしい。
2人とも、いたってまじめだ。
要人は、ほほえみを浮かべたまま言った。
「僧侶の孝義くんには、怒られるかもしれないが……もはや、私たちは、離れるつもりはないんだ。でも、家族の反対を押し切って駆け落ちすることもできない。……生きるも死ぬも、2人なら、それでいいという結論に至ったわけだ。」
まいらは、苦虫を噛み潰したような顔で、無言で頭を下げたまま、ムスッとしていた。
「やあ。孝義くん。久しぶりだね。……長らく、孫を預かってくれて……本当に、お世話になりました。ありがとう。……今日も、まいらを、ここに、連れて来てくれて、ありがとう。」
要人はまず孝義に感謝を伝えたあと、孫のまいらに謝った。
「まいら。すまなかった。」
言葉は簡潔だが、要人は深々と頭を下げた。
「まいらちゃん。ごめんなさい。」
領子もまた、シーツにつきそうなぐらいに頭を下げた。
まいらは、困ってしまった。
「やめて。そういうの。……もう、いいから。……身体に障るといけないから。」
2人が頭を上げるのを待って、まいらはボソボソと言った。
「いっぱい聞きたいこともあったし、文句も言いたかったんやけど……もう、本当に、いい。」
精一杯の言葉だった。
いまさら、何も言えるわけがない。
こんなにも、イイ表情の祖父を観たことがない。
おじいちゃんなのに……私のおじいちゃんのはずなのに、色気だだ漏れだ。
まるで他人のように感じて、まいらは、多少ねじくれた。
そして、ついつい意地悪を言ってしまった。
「……てゆーか、私が反対しても、無駄やろ?……もし、それでも、私が、許さないってゆーたら……おじいちゃん、おばさまを諦められるの?」
「こら!まいら!」
孝義が慌てて窘めようとしたが、まいらの口から飛び出した言葉はもう戻らない。
強がって、まいらの口がへの字に結ばれた。
要人は領子と顔を見合わせ、それから、ふっと笑った。
余裕綽々な態度に、まいらは苛立ちを募らせた。
しかし、要人の返答は、まいらの想像もしなかったものだった。
「……うん。……領子さまと相談したのだが……そのときは、2人で死ぬことにするよ。」
「はあっ!?」
「心中……ですか……。」
さすがに驚いた。
しかも、冗談ではないらしい。
2人とも、いたってまじめだ。
要人は、ほほえみを浮かべたまま言った。
「僧侶の孝義くんには、怒られるかもしれないが……もはや、私たちは、離れるつもりはないんだ。でも、家族の反対を押し切って駆け落ちすることもできない。……生きるも死ぬも、2人なら、それでいいという結論に至ったわけだ。」