いつも、雨
「……やだ。」


まいらは、ふるふると小刻みに震えていた。



黙って、孝義はまいらの両腕を両手で支えた。


孝義の熱は、まいらの心を少し落ち着かせた。



改めて、まいらは訴えた。


「やだ。死ぬとか。絶対やだ。今まで好き勝手してきたくせに、今さら、家族に気を使うふりするとか、偽善やわ。これからも、好きにすればいいやん。」


まいらの言葉は、要人と領子を、肯定するようにも否定するようにも聞こえた。



……素直じゃない言い方して……それじゃ、伝わらねーぞ。


孝義は息をついてから、補足説明を試みた。


「僭越ですが……まいらは、おじいさんと大伯母さまの幸せを、心から願っています。……な?まいら。」



まいらは、口をへの字に結んだまま、それでも、こっくりとうなずいた。



「まいらちゃん……。」


領子は涙をぼろぼろこぼした。



年老いて尚、いつもしゃんとして気高く美しい領子が、さめざめと泣いているのを見て、まいらの胸が痛んだ。



まいらは、泣くのをこらえて、訴えた。


「……2人で、死ぬんじゃなくて、……2人で、幸せに……生きて……。」


まいらの心からの言葉に、要人の目も潤んだ。



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「あんなこと言うつもりじゃなかったのに。」


病院を出てから、まいらはしょんぼりとそう言った。



孝義は、ぽんぽんと、まいらの肩を軽く叩いた。



「……ずるいよね……命を引き合いに出すの……。」


「まあ……海千山千のじーさんに、敵うわけなかったよな。……でも、ハッタリじゃなくて、本気やろ、あれ。」


こくりと、まいらはうなずいた。


「……残された時間が、どれぐらいかわからんけど……じーさんたちが、幸せな時間を過ごせはるといいな……。」


遠い目をした孝義に気づいた。




……そっか。


孝義くんも……身体の弱い奥さんが病気で亡くなっていくのを看取ったんだもんね……。

他人事じゃないんだ……。








「孝義くん、幸せだった?」


車を出してから、まいらにそう聞かれて、孝義は苦笑した。


……さっきの会話の流れとは言え……妻を亡くしてまだ月日が過ぎていない自分に、「淋しいだろう」「かわいそう」と言う人はいても、「幸せ」を問う人はいない。


そりゃあ、淋しくないと言えば嘘になる。


だが……。
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