いつも、雨
「……ああ。幸せやった。心が通い合う幸せを、教えてもろた。……だから、今、こうして、生きてられる。」


そう言ったら、心が温かくなった。



……なるほど。

俺は、かわいそうでも、淋しい男でもいたくないらしい。



穏やかに微笑んだ孝義を、まいらは、初めて「尊い」と感じた。


思わず両手を合わせて拝みたくなったまいらの頭を、孝義がくしゃくしゃと撫でた。



「ありがとうな。」


なぜか、お礼を言われて、まいらはきょとんとした。



「なにが?」


孝義は、前方を見たまま、にっと笑った。


うんと年上の、立派な高僧のはずなのに……同じクラスの男子と大差ない、無邪気な笑顔だった。


「まいらのおかげで、食事が美味くて、毎日、楽しいわ。」


「……それは……もしかして、孝義くん、私に胃袋をつかまれたってやつ?やったー!がんばった甲斐あったー!」


まいらは両手の拳を上げて、喜んで見せた。



……胃袋だけじゃない。


まいらの一途な想いは、無条件にうれしかった。


揺るぎない信頼に、支えられた。


子供だ子供だと思っていたのに、孝義の身体へのいたわりに、忘れていた母親の無償の愛を思い出した。


そして何より、孝義と一緒いることが幸せだと満面の笑顔を常に向ける……その笑顔に、釣られて、自分も幸せになれる……。



思えば、初恋相手の希和子も、亡き妻も、庇護欲を掻き立てる存在だった。


まいらを家に預かったのも、最初は庇護だったはずだが……庇護されるだけで終わらない強さに圧倒された。


なるほど……まいらは、希和子の娘ではあるけれど、同時に、義人の娘で、もっと言えば、あの要人の孫娘だ。


たくましさとふてぶてしさは折り紙付きだ。




……まいらなら、魑魅魍魎の跋扈する伏魔殿のような本山で上手く立ち回れるようになるかもしれない。


いや、それどころか、牛耳れる可能性もあるぞ。


まあ、まだまだ先の話だな。




「ね、ね、夏休みが終わっても、放課後、ご飯作りに来てあげようか?登校前に、お弁当届けてあげてもいいよ?」


調子に乗って、まいらは、運転する孝義の顔を覗き込んで、そう尋ねた。

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