いつも、雨
「や。堪忍。そんなつもりはないねん。……あのな、領ちゃんに幸せになってほしいねん。それが、わしだけじゃなくて、家族みんなの願いやねん。せやから、領ちゃん、意地はらんと、社長と一緒になり。」


夫というより、父親か祖父のように大きな愛情を、一夫は領子に示した。


「とりあえず、お母さまの荷物は、すべて、新居に入れておきましたから。竹原と喧嘩しても、帰って来ちゃダメですよ。……でも、お招きくださったら、いつでも、わたくしたち、みんなで、遊びにうかがいますからね。淋しくなったり、退屈されたら、呼んでください。」


百合子は笑顔でそう言った。



離婚は一夫との絶縁を意味すると思っていた領子は、驚いた。


「みんなって……一夫さんも?」


一夫は当たり前だと、笑った。


「喧嘩別れするわけじゃないんや。領ちゃんが、ちゃんと幸せかどうか、見張ってんとな。」


要人は、恐縮して、少し頭を下げた。



「……それからな、領ちゃん、勝手に手続きしてしもたけど……、百合ちゃんと碧生くんは、わしの養子になったから。……領ちゃんと離婚したら、わしが独りになるって心配してくれてたみたいやけど、そういうことやから。わしらは、これまで通り、あの家で楽しく暮らすから。」

一夫はそう言って、百合子と碧生の肩を抱き寄せた。


碧生はともかく、百合子も嫌がる様子を見せず、むしろ笑顔で一夫を見つめていた。


領子は、口元を手で覆った。


……いつから百合子は、こんなにも、一夫さんに打ち解けたのだったかしら……。


再婚当初は、完全に他人だったのに……。


気がついたら、いつの間にか、本当の家族に……ちゃんと、父と娘だったわ……。



「……では、離婚で、独り、放り出されるのは、一夫さんではなく、わたくしなのね。……よかった……。」


ぽろぽろと、領子の瞳から、綺麗な涙がこぼれ落ちた。


要人はおもむろにハンカチを出して、領子に差し出した。


「独りじゃありません。私がおります。」


言わずもがななことを言った要人に、領子は苦笑して、それからちょっと強がってみせた。


「……当たり前ですわ。わたくしたちは、お互いの家族に対して、責任を負ってますもの。……共に居ることは、義務ですわ。」


「そうですね。では、私にも、責任を取らせてください。」


要人は領子にそう言ったあと、おもむろに百合子に対して言った。
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