いつも、雨
「領子さまと再婚しても、残念ながら、法的に、私は君の親になれるというわけではないらしいので、面倒をかけるが、私とも養子縁組をしてくれないか?」


「え……それって……あの……どういう……」


思ってもみなかった申し出に、百合子の頭は真っ白になった。



横から碧生が、口を出した。

「や。そこまでしていただかなくても。どうせ、ほら、俺たち、由未と恭(やす)まっさんの夫婦養子にもなってますから。竹原さんの遺産は、いずれ、巡り巡って、相続させていただけますよ?」


要人は、そんなことはわかっていると、重々しく頷いてみせてから、改めて言った。


「私の個人遺産はなかなかなものでね、分ける相手は多ければ多いほど、国に取られなくていいんだよ。……それに、百合子には、由未のおこぼれじゃなくて、それ相応のものを受け取ってほしい。……今さらだが……父親として、最後に、それぐらいさせてくれないか?」


百合子は、途方に暮れた。


何て返事をすべきか、わからない。


……でも、だって……それじゃ、義人さんや由未さんの相続額が減ってしまうんじゃないかしら?




「……竹原。あの……あなたがずっと振り込んでくださっていた通帳、わたくし、手をつけませんでしたの。……それだけでも、百合子に、かなりの財産を残せますわ。……ですから、そんな……義人さんや由未さんにご迷惑をかけるようなことは、なさらないで。」


百合子の代わりに、領子がそう訴えた。


要人は、肩をすくめた。


「それはそれ、でしょう。……どうぞ、ご心配なく。相続の件は、だいぶ前から決めてましたので。それにこれは、もともとは義人が自分の顧問弁護士と相談して、私に進言してきたのですよ。……もう1人の妹にも公平に分けてほしい、と。」


「義人さん……。」


みるみる、百合子の瞳が涙でいっぱいになった。


異母兄妹でありながら真剣に愛した年月が去来する。



嗚咽に震える百合子の肩を、そっと碧生が支えた。




「まあ、……養親が増えるっちゅうんは、ええことばっかりちゃうけどな。」


一夫が、ボソッとつぶやいた。


「確かに。相続の権利を得るだけではなく、義務も生じると言えますか。」


要人はすぐに賛同したが、領子は首を傾げた。


「義務って、何ですの?介護?わたくしの介護は、竹原がしてくださるんでしょう?」



すっかりそう決めつけている領子に、一夫は肩をすくめた。
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