いつも、雨
「……まあ、介護は、専門のモンに任せたらええけどな、……弔いは他人任せっちゅうわけにいかんしな。」


「ああ、墓守りですね。なるほど。それに、仏壇と神棚?」


「恭匡さんも、いつも子供達に言い聞かせてくださってますわ。お墓参りにも必ず子供達をお連れくださるし……」


百合子は、自分の言葉で大切なことを思い出した。


「お母様、再婚なさるなら、苗字はどうされますの?それに、あの……」


さすがに面と向かって、墓はどうするかとは聞けなかった。



察した要人が、あっさりと答えた。

「苗字は、もちろん、橘でしょう?領子さま。……どうせなら、橘姓の墓を一基作って、3人で入りましょうか。墓友、というそうですよ。……まあ、分骨はするとして。」


「はかとも……。」


初めて聞く言葉に、領子は首を傾げた。



「……3人て……わしも、一緒に入るんけ?」


一夫は心底驚いた。



しかし、百合子夫婦と子供たちは、恭匡の夫婦養子となったときに、姓を天花寺に改めた。


最終的に橘姓なのは、領子と一夫、そして、領子と再婚する要人だけになる。



「一夫くんと一緒なら、あの世も楽しいだろうな、と。……嫌ですか?」


要人の言葉に、一夫の目が赤くなった。


「……嫌じゃない。でも、なんや、あの世まで、2人の邪魔するみたいで、悪いな。」


「邪魔なんて。とんでもない。一夫くんには、感謝しかありませんよ。……そりゃあ、再婚されるとうかがった当初は、呪い殺したいぐらい腹が立ちましたが。」


しれっと、要人は昔年の恨みを口にした。




「……竹原……おとなげない……。」


領子がたしなめた。



「お互い様やな。……でも、不思議やなあ。わしは、それでも、社長のこと、恨めんわ。……領ちゃんのこと、頼んます。」


一夫はそう言って、要人に深々と頭を下げた。



「頭を上げてください。……もう、とっくに、社長じゃありませんよ。」


要人の言葉を受けて、一夫は頭を上げると、領子に言った。


「せや。領ちゃんも。もう使用人みたいに『竹原』って呼ばんでもええねんで。」


「あら。……でも、約束しましたもの。『竹原』って呼び続ける限り、そばにいてくださるって。ね?竹原。」


にっこり微笑んだ領子に、要人は苦笑した。



「……そうでしたね。しかし何十年前の話ですか。……」


「53年よ。」


迷いもなく即答した領子に、みんな呆れた。
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