いつも、雨
「領子さま。共に、生きましょう。地に足をつけて、生活いたしましょう。……敢えて、家事を手伝ってくれる人はたのみませんでした。食事も、掃除も、洗濯も、2人でやりましょう。」


驚きすぎて、領子の涙がぴたりと止まった。


「あの……決して、嫌というわけではないのですが……わたくし、まったく、経験したことがありませんのよ。……できるかしら?」


もじもじと、恥ずかしそうに領子が言った。



要人は笑顔でうなずいた。


「もちろん知ってますよ。……いや、人に頼んだほうがよければ、すぐに来てもらえるように手配いたします。」


「……。」



そう……ね……。


家事をしてくれる人を頼むということは……2人きりじゃなくなるということなのね。


ホテルのように、留守中にお部屋のお掃除をしてくださるわけじゃないんだもの。



……キタさんが生きていれば……。




「わかりました。やってみましょう。」


悲壮な決意をした領子がかわいすぎて、要人は声を上げて笑った。


「や。失礼。そんな、心配しなくても大丈夫ですよ。俺は何でもできますから。」


「知ってます。」


気恥ずかしくて、領子は歩調を早めた。




「領子さま!ゆっくり!急がないで!」


慌てて要人が追いかけた。




建物の中は、ひんやりしていた。


「まあ!暖炉があるわ!それに、お茶室も!」


「……こりゃ、装飾じゃなく、実用品だな。山だから、寒いんでしょうね。ほら、囲炉裏もある。」


「囲炉裏!?」


領子の声が弾んだ。



「……窓だけでなく玄関にも網戸が入ってたな。藪蚊も多そうだ。」



キョロキョロと見て回って、要人は独りごちた。



「素敵な別荘ね。気に入りましたわ。竹原、ありがとう。」


「一夫くんにもお礼言ってあげてください。俺も、気に入った。」


そう言って、要人はソファにどかりと座り、手招きした。



領子は頬を染めて、近づいた。


隣に座ろうとした領子の細い腰を捉えて、要人は自分の膝に座らせた。


黙ってうつむく領子にそっと口づけた。




優しい長いキスのあと、領子はおもむろに自分の左胸に手を当てた。


「領子さま?痛むのですか?」


「いえ。そうじゃなくて……ドキドキしてるなあ、って。」



そう答えて、領子は淋しげに微笑んだ。


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