いつも、雨
結局、ぐったりして緩慢にしか動けない領子を、要人は再び抱き上げて運び……そのまま一緒にお風呂に入った。

確かに恥ずかしいけれど……もっと恥ずかしいことをさんざんされてしまった後なので、領子の感覚は麻痺したようだ。

さすがにお風呂場での性交は、しなかった。


湯船で領子が力尽きて沈んでしまわないように、要人は背もたれになった。

背後から領子の肩や髪にそろそろとお湯をかけ、かわいいうなじに何度も口づけた。


……本当は俺のモノ!とばかりに痕をつけたいけれど……舌を這わすだけで我慢した。

キスマークは、さすがにまずい。

まずいけれど……この白い肌に、小さな内出血は、さぞや映えるだろう。


……そっちのほうの趣味はないはずなんだけど……領子さまにらは縄や蝋燭の飛沫も……美しいだろうな……。


いやいや。

ダメだって。

そうじゃない。

ないんだけど……領子が過ぎた快楽に泣き叫ぶ姿が脳裏から離れそうもない。

こんな気持ちになるなんて……。




脱衣場でも、要人はかいがいしく世話を焼いた。

全身をバスタオルでくるみ、優しく拭き、浴衣を着せて、髪を乾かす。

まるで等身大のお人形遊びをしている気分になってくる。



領子は、まだぽーっとしている。



……こんなの、知らない……。

みんな、本当に、こんなことするの?

こんな……こんな……こんなこと……竹原は、他のヒトにもしてあげてきたのね……。



しみじみと、そう考えたら、泣けてくる。


領子は、要人にぎゅーっとしがみついた。



まるで、2人の秘密を隠すように……雨は一晩中降り続いた。



******************


翌朝、領子はなかなか起きられなかった。

せっかく準備してくださった湯豆腐の朝ご飯も、ろくに食べられない。


……なんとなく……お腹……というより身体の奥……子宮?が疼く。

痛いというより、要人に触れるときゅんきゅんする。


これって……なに?

ちゃんと避妊具もつけたし、特に無茶なことはしていない。

なのに、何だか、明らかに違和感がする。

たった一晩で、別人の身体になってしまった気分。


……いいえ。

わたくし、別人になったんだわ。


今までとは違う。

名実ともに竹原の恋人になれたんだわ。


この心も、この身体も、すべて竹原のものよ。

誰かに所有されることが、こんなに幸せだなんて、想像もしたことなかったわ。


幸せ……。

わたくし、心から幸せよ……。
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