君の声が、僕を呼ぶまで
小春は、昔から感受性の強い子だった。

…と、小春のお母さんが言ってた。


あれは、小春の力になりたくて、サラの力を借りたくて、初めて小春の家に行った時の事だ。


動物や、植物に、話しかけるのが好きな子。

自然がもたらす光や風が、小春には、言葉に聞こえていたんだろう。


心と声を閉ざしてしまった時に、小春はサラと喋れるようになった。

でもそれは、小春がそう望んだ気持ちがサラの言葉になっていただけ。


夢のない言い方をすると、都合のいい小春の思い込みだ。

けれど、サラと会話出来る事は小春の救いだった。


サラという名前は、最初、小春が“サラブレッド”と付けようとした名残だと聞いた。

…ちょっとそのネーミングセンスは、僕でもどうかと思う。
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