君の声が、僕を呼ぶまで
「…塚倉、先生」

私は慎重に、その名を呼ぶ。


「植木さん、これ、相川さんの分、よろしくね」

雪兄ぃは、悔しいけど、大人だ。

学校で私の事を、間違えて名前で呼んだ事など、一度もない。


「…昔はあんなに可愛かったのに…」

ボソッと言うと、

「おぃおーい、それは年上の俺の台詞だと思うんですけど?」

「分かって言ってます」


「…昔はあんなに可愛かったのになぁ…」

仕返しとばかりに、皮肉を込めて返された。


「ねー、桜子」

耳元で、雪兄ぃが囁く。
< 47 / 389 >

この作品をシェア

pagetop