幼馴染と溺愛!?疑似結婚生活!

幼稚園はちょうど帰りの会が終わった後らしく、保護者がぽつぽつ見られ、バスに乗る子ども、預かり保育で園内に残る子、迎えにきた母親と車や徒歩で帰る子に別れ、慌ただしい時間帯だった。

葵くんの通う幼稚園は、同じ敷地内に高等部までありお受験さえ受かれば高校までエスカレーター式で進むことになっている。
なのでそれほど荒れた子どもや問題のある保護者は少ないと思っていた。

「市井さん、こちらです」

教室へ行き葵くんを探していると、職員室で園長先生と担任の成宮先生が手招きしてくれていた。
焦ってきた私に、ホッとするような笑顔で労わる言葉をかけてくださった。

「ごめんなさいね。葵くん、たった今寝ちゃったみたいで」
「すみません。色々お気遣い頂きまして。……それで葵の怪我は?」

職員室のソファで眠る葵くんの頬に絆創膏が貼ってあった。
目には泣いた後だと物語るように、涙が睫毛を濡らしていた。

「引っ掻かれたんです。怪我は全然大したこともなかったし、葵くんはちゃんと最後謝罪しましたよ。葵くんは喧嘩相手の頬を抓っていました」

あの良い子の葵くんが、余程怒ったのね、と静かに笑われた。

「喧嘩はしたんですけど怒らないであげてほしくて。そして我慢してる葵くんの言葉をもっといっぱい聞いてあげてほしいんです。心に詰まって爆発させないように、全部聞いてあげてほしいんです」
園長先生の言葉に、隣で成宮先生も頷くと口を開いた。

「葵くんはお友達から『おまえのまま、しんじゃうのか』って言われて……号泣したんです。『しなないためににゅういんしてるんだっ』って。子どもなのに、ちゃんと理解してて葵くんとてもお利口だったんです」

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