幼馴染と溺愛!?疑似結婚生活!


笑いながら紙袋から野菜を取り出す飛駒を見て、もう一度言う。

「心配して何が悪いの。お兄ちゃんが来たってことは、アンタが此処にいたがってたのに疑似新婚生活だと馬鹿な発言が全部できなくなるんだよ」

「へえ。心配してくれるんだ」

ニヤニヤ上機嫌で身構えてしまう。

「なんで? 美結は一人で葵を見るって言って、俺を追い出そうとしてたよね」

「そ、れは」

「なんで心配してくれるの?」

人参とトマトを持っていた飛駒は、急に真面目な顔で私を見る。
目を逸らせないのは、やっぱり真っ直ぐすぎて怖いからだ。

飛駒は私に気持ちを伝えてくれたけど、私は上手く纏まらなくて伝えたことはなかった。
だから飛駒のこの発言に、ようやく伝える時が来たんだと息をのむ。

「もう一緒に住むのが嫌だなんて思ってないから、だよ」
「ふうん……」

けれど飛駒から帰ってきた言葉は意外にも素っ気なくて私も固まった。

「今日はカレーにするんだ。子ども用の甘口カレー。人参も星形にしご飯を動物にしてカレーのお風呂に入れてさ」
「飛駒?」
「俺さ、調子乗るけどいいよね?」

ガサガサ音を立てながら紙袋から取り出した野菜を、次はボールに入れて水を流しながら洗い出す。
その時、耳が赤く見えたから洗濯物を籠に放置して飛駒に近づく。

見上げた飛駒の顔は、洗っているトマトのように真っ赤だ。

「一緒に住むのが嫌じゃないって、それ、ちゃんと言葉にして伝えて」
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