幼馴染と溺愛!?疑似結婚生活!
好き……。
その言葉を何度も言われてしまい、包丁を持ったままへなへなと座り込んでしまった。
正確には、腰が抜けてしまったに近い。
けれど、知ってしまったら違う。
近づいて私の手から包丁を奪う飛駒の指先が、熱いことに気付く。
怖いと思っていた瞳が、ギラギラと燃えているのに気づく。
「確かに誠義兄さんは怖いけど、帰国する前にお前と正式に恋人以上になってたら問題ないんだろ」
「……嘘」
「俺、本気で好きだから。迷ったり焦ったりしても構わないけど、早く決めてもらわないと外堀を完全に埋めて行く。姉貴、葵、お前の家とか……手当たりしだい、ね」
ちょっと嬉しそうに笑った飛駒は、やはり怖い。
何か考えているのか分からない。
けど、飛駒の真っ直ぐな言葉に、どきどきしているのも真実だった。
「ごめん、仕事場からだからやっぱ電話でるわ」
「……さっさと出て」
ぐるぐると思考が回っているけれど、自分の気持ちは『私も好き!』なんて応えられるレベルではない。
その時点で、気を持たせる様なこの関係を、この状況を、持続させてはいけないのだと瞬時に思ったのだった。