絶望の空の色
「満足できたか?」
「とても」
どこかで見ていたのか、今の私が大切に思う人がやって来た。
すごく辛くて、苦しくて、疲れていたときも私のことを諦めずにいてくれた人。
見捨てずにいてくれた人。
私に希望をくれた人。
「日野さまだったんだな、ピアスの君」
「そんな風に呼んでたの」
「いや、うん」
「大丈夫よ。知ってるでしょう?私にはもう薬指の君がいること。……ね、旦那様?」
「職場だぞ」
「それは言いっこなしだよ。先に持ち出したのはそっちだもん」
他愛もない会話で笑い合う。
それを何より幸せに感じる。
ピアスを随分つけずにいたら、痕は残っているものの、耳たぶの穴はどうやら塞がってしまった。
多分きっと、それと同じ。
時は流れ、何もかもがなくなるわけではないけれど、あの頃とは少し違う自分がいる、ただそれだけのことだ。
あの日見た空は、真っ暗闇で。
明日になれば陽が昇ることもわかっていたはずなのに信じられなくて。
それでも空は私を見捨てず、そこにいて、いつでも私を見守ってくれていた。
この人のように。
見上げた空はとても青い。
吹き抜けの空間に広がる青に、白い雲が二つ寄り添って浮かぶ。
なんだか嬉しくなって、その腕に飛び付いた。
「うわ、危ない」
持っていたコーヒーが溢れそうになって慌てて、それで余計に溢れそうになっちゃって、お互いに笑った。
「さぁ、もう一仕事、だな」
「やることは山積みですね」
「その調子」
「今日の晩御飯は椎茸の肉詰めにしてあげましょう」
「お、やったね!」
「だから仕事、どんどん片付けちゃいましょうね」
「望むところだ」