小倉ひとつ。
それから、付け合わせにサラダがつくと書いてあったので、クロック・ムッシュを頼むことにした。


本当はケーキも食べてみたかったけれど、これからたい焼きを作ることを鑑みてやめておく。


クロック・マダムでもよかったんだけれど、目玉焼きまでついていたら、本当にたい焼きが危ない。


せっかく作ったのに食べられないなんて悲しすぎる。


悩んだ末にそう結論づけて注文を告げると、瀧川さんもクロック・ムッシュを注文した。


ベシャメルソースがお好きらしい。瀧川さんはベシャメルソースがお好き、と即行で頭の中にメモしておいた。


「素敵なお店ですね」


ゆっくり店内を見回しながら言うと、ええ、と瀧川さんが微笑んだ。


黒と白を基調にした、ところどころ木目の茶色と植物の緑が鮮やかな内装は、とても落ち着いている。


ハープかな。控えめに流れる柔らかな音楽の合間を縫って、コーヒー豆をひくミルの音がした。


落ち着いた、好きな音だった。
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