小倉ひとつ。
「高さを出すことで泡立てますため、跳ねる場合がございます。お熱いのでご注意ください」


お砂糖は入れないから甘くはないけれど、ランプのような形の器具からそれぞれ注がれるミルクとコーヒーが、ボウルの中に勢いよく流れ込む。


かっこいい、カフェオレのCMでよく見るあれだ……!


自分で作るときはコーヒーを入れてから牛乳を入れるし、買うときは当然完成形で売られているし、過程をこんなに間近で見たことがない。

すごい。素敵、これだけでもう素敵。


スプーンで軽く混ぜてから一口飲むと、熱さがぐっと喉を通りすぎた。


使っているのは酸味と苦味が少ないコーヒーなんだろうか。飲みやすくて美味しい。


でもやっぱり結構熱かったので、少し冷ますべく話題を探す。


……そういえば、入り口でいただいた番号札の話をしようかなと思っていたんだった。


「先ほど入り口で札をいただきまして。私は十一だったんですが、瀧川さんはなんでした?」


私の手に収まる大きさの札を取り出して机の上に置くと、瀧川さんも札を机の上に滑らせながら、九です、と見せてくれた。


こちらの見やすい向きに直してくれているからⅨに見えるけれど、これが瀧川さんの見やすい向きだったら、Ⅺに見えることは必須である。


「間違えてしまう前にお返しします」


ありがとうございます、と札を返すと、「間違えてしまう前にお返しされます」と瀧川さんがくすくす笑った。
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