小倉ひとつ。
「瀧川さんは、あのお店に夜に行ったことってあります?」
並んで歩きながら、白い息を吐く。
明かりで暗がりの濃度が薄められているとはいえ、夜の暗闇にはっきり白く浮かんで、緩やかに後ろに流されていく。
「いえ、いつも朝に伺うので、まだ夜には伺ったことがないんです」
「それは楽しみですね。札は何番になると思います?」
あの三角の札は、お店を出るときには二十番を超えていた。
朝の時点でそうなんだから、きっとお昼時とお仕事終わりの夕方に人がいっぱい来て、夜もたくさんお客さんが来ているに違いない。
「五十番は超えているかもしれないですよね」
「もしかしたら、百番とか二百番とかかもしれないですもんね。でも、そんなに大きい数だと読むのが大変そうです」
「文字も小さくなりそうですよね」
ふたりでそんな予想を立てていたのだけれど、札はまたもや一桁だった。
やってくるお客さんも、そのぶん出て行くお客さんもいる。
札をある程度まで用意しておいて、一巡したら、最初から回すことにしているんだろう。
お店の座席数より十前後多く用意すれば、混雑時にも慌てず確実に札を渡せる。お客さんの管理やカウントは別の手段ですればいい。
「違いましたね」
「違いましたね。残念です」
全然読むの大変じゃなかったですね、なんて言いながら、案内されたテーブル席に座った。
並んで歩きながら、白い息を吐く。
明かりで暗がりの濃度が薄められているとはいえ、夜の暗闇にはっきり白く浮かんで、緩やかに後ろに流されていく。
「いえ、いつも朝に伺うので、まだ夜には伺ったことがないんです」
「それは楽しみですね。札は何番になると思います?」
あの三角の札は、お店を出るときには二十番を超えていた。
朝の時点でそうなんだから、きっとお昼時とお仕事終わりの夕方に人がいっぱい来て、夜もたくさんお客さんが来ているに違いない。
「五十番は超えているかもしれないですよね」
「もしかしたら、百番とか二百番とかかもしれないですもんね。でも、そんなに大きい数だと読むのが大変そうです」
「文字も小さくなりそうですよね」
ふたりでそんな予想を立てていたのだけれど、札はまたもや一桁だった。
やってくるお客さんも、そのぶん出て行くお客さんもいる。
札をある程度まで用意しておいて、一巡したら、最初から回すことにしているんだろう。
お店の座席数より十前後多く用意すれば、混雑時にも慌てず確実に札を渡せる。お客さんの管理やカウントは別の手段ですればいい。
「違いましたね」
「違いましたね。残念です」
全然読むの大変じゃなかったですね、なんて言いながら、案内されたテーブル席に座った。