小倉ひとつ。
「立花さん、猫舌ですか?」

「いえ、そんなことはないんですが……」


スプーンでひと匙掬ってみるも、やっぱりまだ熱そう。できればもう少し待ちたい。


困っていると、瀧川さんが話題を振ってくれた。


「猫舌の対義語ってなんて言うんでしょうね」

「対義語っていうとあんまり思いつかないですね。私は猫舌じゃないって否定をつけてしまうので」

「そうですよね。猫といえば犬、みたいな感じに思いがちですけど、そもそも猫と犬は何も対義語じゃないですし」


確かに。洒落ならそうなのかもしれないけれど、犬舌ってあんまり聞かない。

そして猫も犬も動物である。


なんでしょうね、なんて言いながらスプーンで掬うと、立ち上る湯気が落ち着き始めていた。


一応念入りに冷ましてから口に運ぶ。さっきは熱さで味がよく分からなかったからね。


「美味しい……!」

「よかったです」


やっと笑みこぼれた私に、瀧川さんが微笑んだ。


ゆっくり食べて、お互いにそろそろお皿もあこうかという頃。


「立花さん」

「はい」

「まだ、ケーキを召し上がるのはご自宅のご予定ですか」
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