小倉ひとつ。
「ご注文はお決まりですか?」

「はい。ふたりともお薄と練り切りのセットで、抹茶はこちらを。練り切りは末廣と寿ぎをひとつずつお願いします」


メニューを指差しつつ注文する。


「お茶はこちらでお出ししますか? それとも、あらかじめご用意したものを持って参りましょうか」

「あらかじめ用意していただいてよろしいですか」

「かしこまりました。お菓子とご一緒にお持ちしますか? お先にお菓子だけお持ちしましょうか」

「そうですね……」


ええと、初めて聞かれたけれど、これはつまり、来る回数を減らしましょうかっていうご提案かな。

本来ならお菓子、お薄の順で二回に分けるはず。


……私が男性とふたりで来るなんて初めてだからだろうか。


いやいやいや、多分お茶をあまり知らない方にも親しみやすいようにってことじゃないかな。


甘いものをいただくときに飲み物がないとつらいって方は多い。


ちょっと無作法だけれど、美味しく食べてもらえる方がいいもんね。


だから、初めての方には聞いてるんじゃないかな、多分。うん。


私が聞かれたことがないのは、お茶を習ってるのに知らないはずがないだろうって判断されたんじゃない? きっとそう。


それっぽい理由を探して心を落ち着けてから、自分ひとりで決めるわけにはいかないので、瀧川さんを振り返る。
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