小倉ひとつ。
作法通りにひとつずつ手順を追って、お辞儀をしたりお先にって言ったりするのも楽しい。
でも、こういう好きなところの詰め合わせみたいなお茶会も楽しい。
言い方は悪いかもしれないけれど、気にし始めたらきりがない。そもそも私お着物着てないもんね。
半分こしてそれぞれ交換する。
「お先に」を言う相手がいないので、ふたりでいただきますを言って、ひと切れ口に運んだ。
「美味しい」
ふいにこぼされた呟きは、完全に素で驚きが濃いのに、いつも通り丸い。
こういうときに、瀧川さんは普段から言葉が丸い方なんだって垣間見る。
「ええ。美味しいですね」
随分前から優しい口調が好きだった。
どんなときでもうまいって言わないところが好きだった。
食うでも食べるでもなく、買うでもなく、いただく。
おまえじゃなくてあなた。
嫌いじゃなくて苦手か、あまり得意ではなくて。
いいですかじゃなくて、よろしいですか。
そういう小さな、瀧川さんの柔らかい言葉選びに気づく度に、ああ好きだなあ、と思う。
私が生まれたとき、祖父が庭に小さな紅葉を植えてくれた話とか、枕草子以外の教科書に載っていたものの話とかをして、瀧川さんのときと私のときでは結構内容が変わっていて年の差を勝手に感じつつ、一緒に片付けをした。
でも、こういう好きなところの詰め合わせみたいなお茶会も楽しい。
言い方は悪いかもしれないけれど、気にし始めたらきりがない。そもそも私お着物着てないもんね。
半分こしてそれぞれ交換する。
「お先に」を言う相手がいないので、ふたりでいただきますを言って、ひと切れ口に運んだ。
「美味しい」
ふいにこぼされた呟きは、完全に素で驚きが濃いのに、いつも通り丸い。
こういうときに、瀧川さんは普段から言葉が丸い方なんだって垣間見る。
「ええ。美味しいですね」
随分前から優しい口調が好きだった。
どんなときでもうまいって言わないところが好きだった。
食うでも食べるでもなく、買うでもなく、いただく。
おまえじゃなくてあなた。
嫌いじゃなくて苦手か、あまり得意ではなくて。
いいですかじゃなくて、よろしいですか。
そういう小さな、瀧川さんの柔らかい言葉選びに気づく度に、ああ好きだなあ、と思う。
私が生まれたとき、祖父が庭に小さな紅葉を植えてくれた話とか、枕草子以外の教科書に載っていたものの話とかをして、瀧川さんのときと私のときでは結構内容が変わっていて年の差を勝手に感じつつ、一緒に片付けをした。