小倉ひとつ。
ひたすら恐縮している瀧川さんは、別に自意識過剰ではない。むしろ、すごく苦労してきたのを知っている。


恋心を抱く女性はときに盲目的だ。


その面倒臭さに辟易しているのだろう瀧川さんが、色恋ごとを少しでも避けたいと警戒するのは当然だ。


先回りして牽制を含むのも、やりすぎたら謝るのも、一種の処世術なんだろう。


「……すみません……」


猛省している瀧川さんに、まあその勘違い、もとい警戒も仕方ないかもなあ、と思う。


確かに、謝って済ませようとしたのは若干私に失礼だけれど。


確証が持てなくても、少しでも不安になったらあらかじめ予防しておかなければ困るほどに、きっと多くの迷惑をかけられてきたのだと簡単に推測できる。


瀧川さんはあまりに優良物件すぎるのだ。


今までの体験が蘇ったに違いなかった。
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