小倉ひとつ。
笑うときに伏せ目がちになるくせがあるらしくて、憂いを帯びているのではないけれど、口元をほころばせつつ少しだけ視線を落とし、まぶたをゆっくり上げてから、相手の目を見て優しく笑う。


彼が笑うとき、澄んだ佇まいを長いまつ毛が濃い黒で縁取り、白い頬に、ほとり、と黒々と伸びた影を落とす。


長くて量の多いまつ毛が奇妙に目元だけ濃い感じや化粧のような違和感を与えずに、はっきりと目を縁取っているだけでくどく見えないのは、まっすぐに伸びているからだ。


まっすぐに伸びたまつ毛は普段あまり意識されない。独特な笑い方で頬に影が落ちて初めて、長いまつ毛だと分かる。


女性的ではないけれど、白と黒の対照がはっきりした、爽やかな美しさ。


あまりの美貌から、無表情では、ともすれば彫刻のように冷たく見えそうなのに違うのは、瀧川さんがよく微笑む人だからだ。


笑いじわができるほどではなくて、唇が緩やかな弧を描く程度の微笑み。


瀧川さんは、私が見かけるときはいつも、上品に口角を上げている。


普段の柔和な笑みを消したなら、全く別人かと見紛うに違いなかった。
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