【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
ちょうど手空いてるみたいだし。莉胡と行くと言い出さないように、テントを留める部品を近くにいた莉胡に取ってもらう。
それでも莉胡と一緒じゃなきゃ行かないかな、と思ったのは俺の杞憂だったようで、織春はそのまま由真と飲み物を買いに行った。
「ちーくん、彼女に頼まれたら"一緒に行く"って言うかと思ったのにめずらしいね」
「え?……作業してたからね」
「でも莉胡ちゃんに言われたら絶対一緒に行ってたでしょ」
千咲と羽泉にそう言われて、たしかに、と思うけれど。
ほら、俺と由真は好きで付き合ってるわけじゃないし。由真は春のこと好きだから、うれしいだろうし。
「莉胡ー。
遊んでる最中に行くのメンドーだから、今のうちにテキトーに食べるもんも調達しに行くぞ」
「え、あ、うん。いま行くね」
パラソルの設置を終えたらしいトモが莉胡に声をかけて、しゃがみこんでじっと俺の作業を見ていた彼女が立ち上がる。
パーカーの裾が砂についてしまっていたようで、ぱらぱらと砂が落ちた。
「気をつけて行ってきなよ」
「うん。いってきます」
「いってらっしゃい」
莉胡がトモに駆け寄っていくのを見て手元に視線を戻そうとしたら、ぐっと背中に乗りかかられた。
俺の視界にいるのは千咲と羽泉だから、アルトか。
「なに。重いんだけど」
「ん~?由真のことはあっさり見送ったくせに、
莉胡には"気をつけて"やら"いってらっしゃい"やら言うんだなと思ってよ~」