【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
「……そういう身内の話はもういいじゃん。
っていうか千秋、車出すのに来てくれたんでしょ」
「そうだよ。でも挨拶もなしにってどうかと思って。
さっきからお騒がせしてごめんね。千瀬の兄で、七星 千秋(ななほし ちあき)。歳は今年の誕生日で27。一応既婚者で、2歳になる娘もいるよ」
ざっくりと。
自己紹介してくれるちあちゃん。結婚したのも子どもができたのも話に聞いただけで、こうやって本人の口から聞くのははじめてだ。
どうやら式も挙げなかったようでお嫁さんにも会ったことはないし、もちろん娘ちゃんにも会ったことはない。
千瀬から写真は見せてもらったことがあるけれど、すごく優しそうで素敵なお嫁さんだった。
「……人畜無害そうな顔してるけど。
千秋はいちばん東西の仲が悪かったって噂されてるときに月霞2代目で総長やってたから悪名高いよ。思いっきり元ヤンだからね」
「千瀬うるさい。莉胡の教育に悪いでしょ」
わたしの教育に悪いって言われても……
わたしもちあちゃんがヤンチャしてた頃を知ってるから、なんとも言えない。数週間ごとに髪を染めて赤だったり金だったり、派手にしていたのを覚えてる。
「とりあえず、どうする……?
こっちで準備する組と、買い出し行く組にわかれる?」
「そうだねえ。
でもあんまり残る組はやることないでしょうに」
「買い出し組が帰ってきたら、準備する組が料理する。
休憩はおなじぐらい取れそうだから大丈夫でしょ」
「じゃあ千瀬は準備する組じゃない?」
なんせ、器用だし美味しくつくってくれるし。
ほかに誰ができる?と聞こうとしたら、由真ちゃんが意気揚々と手を挙げて、準備する組をえらぶ。ちあちゃんを呼び出したこともあって、わたしは買い出し組だ。
「羽泉と、トモは料理できるでしょうに。
っつうことで買い出しは俺と春と莉胡な~。千咲は料理できねえけど、まあ手伝いはできるだろ」
「雑……!ぼくだけ扱いが雑だよ!」