【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
「別荘、って……
莉胡ちゃんのぱぱ、お偉いさんなの?」
──ふと。
由真ちゃんのそんな問いかけに、なんとも言えず口角を上げてみせれば、「お偉いさんでしょ」と千瀬。そして「お偉いさんだよね」とちあちゃん。
ときどきこうやって兄弟のタッグを見せられると勝てないから困る。
「"サマー・エレガント・コーポレーション"
SEC、って聞いたらみんな知ってるよね」
「SECって、大手旅行会社じゃないですか」
「そうそう。
その社長が莉胡のお父さんなんだよね」
あっさりと。
わたしが何を言わなくても、ばらしてしまうちあちゃん。……そうなのだ。わたしのお父さんが全国を飛び回っているのは、その仕事上で、だ。
「まじか。つーことは、お前社長令嬢?」
「……あんまり言いふらさないでって言ってるんだけどね」
ただでさえ女友だちができないのに、国内最高峰の大手旅行会社の社長令嬢だなんて知られたら、本当に線引きされてしまう。
千瀬や十色はもちろんわたしがそうであることを知っているけれど、ミヤケや千音には言ってないし。
「まあ実際は……
ちあちゃんが継ぐって話の方が有力だから、わたしが継ぐって雰囲気はあんまりないよ」
「なに言ってるの、莉胡。
いちばん有力なのは"千瀬と莉胡が結婚して、千瀬が跡を継ぐ"だったでしょ」
いつだったかの話を持ち出すちあちゃんに、思わず顔をしかめる。
ついこの間までは、たしかにそうだったのだ。言われてはなかったけれど、お互いに知っていた。
だけど……
わたしと千瀬にそれぞれ恋人ができたことでそれは取り消され、最有力候補はちあちゃんを後継にするというものになった。