【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
わたしに抱きついたままの由真ちゃんのことはスルーで、話をはじめる織春。
真面目な雰囲気をさとったみたいに由真ちゃんが口をつぐんで、織春がわたしに持たせていた袋を受け取った。
「まず、東と西は統一しねえ。
これから先も東は月霞、西は累だ」
「……まあ織春ならそうすると思ってたわ~。
いまさら関東全域が累だって言われても、ねえ」
「その代わり、東西は初代から続いてきた争いをやめる。
仲良く、とまではいかねえが、正式に手を組む」
「……それでいいと思うよ。
いつまでも敵対してるままじゃ、ね」
「──だが、いますぐに手は組まない」
いますぐに、手は組まない……?
てっきりすぐにでも行うのかと思っていれば、予想外の答え。みんなもそこまでは理解出来なかったようで、不思議な沈黙が流れたあと。
「月霞の6代目の男。
……今年、高3だからな。任期はあと数ヶ月だ」
「ああ、そっかー。
この時期に組んでも受験とかあるだろうしー、大変だもんね」
「それもある。
……俺は西の勝利にしない代わりに、ある条件を持ち出すつもりだった。──が、とっくに向こうはその気だったらしい」
そう言って織春ががさごそと何かを取り出したのは、さっきの袋。
黒い布地のそれが一瞬なにかわからなくて首をかしげていたら、広げられた瞬間に、理解した。
背中部分には月霞が代々受け継いでいる月の模様と。
大きく刺繍された文字は、『月霞7代目』。
「千瀬。お前の分だそうだ」
「……は?」