【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
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インターフォンを、鳴らそうとして。
この時間はおばさんがいないことを思い出し、バッグの中からふたつ連なった鍵を取り出す。片方はうさぎ、片方はハリネズミのシールが貼られた鍵。
そのうちハリネズミの方を、鍵穴に差し込んだ。
「なんでオメー、千瀬ん家の鍵持ってんだよ」
「勝手に家に出入りできるようにって、昔から持ってるの。
千瀬もわたしの家の鍵持ってるから、勝手に入ってくるわよ」
昨日千瀬が雷雨の中帰ってきて、わたしの家に入れたのは合鍵を使ったからだ。
ほとんど一緒にいるから合鍵を使うことはあまりないけど、こうやって用事がある時には使うから、結構便利だったりする。
「お邪魔しまーす」
しーん、と静まり返った家の中。
リビングに目当ての姿はなくて、とんとんと2階へ上がっていく。千瀬の部屋の扉をノックしてみたけれど、彼の返事はない。
「寝てるのかも。……ちょっと待ってて」
振り返ってそう声をかけて、小声で「千瀬ー?」と名前を呼び、部屋に足を踏み入れる。
ベッドの中にいるらしい彼に近づいてみたら、すやすやと眠っていて。その頬がまだ薄ら赤いということは。
「熱、下がってない……?」
ぺたんとベッドのそばに座り込んで、頬に手の甲を当ててみる。
予想以上に熱いし……まだ、下がってない、わよね?
「……千瀬が熱を長引かせるなんてめずらしい」
わたしが思っているよりも長く、雨の中にいたのかもしれない。
起こさない方がいいわよね、と。手を引っ込めさせようとしたところで、逆にぐい、と、その手をつかまれた。
「……千瀬?」