私のご主人様Ⅱ
「失礼します。…っ!?」
顔を見せたのは暁だ。暁は上座に座る源之助の姿に驚きつつも頭を下げる。
その後ろから顔を出した梨々香は、場の雰囲気に息を飲む。
これには逆に源之助が驚いたように季龍を見たが、なにも言わないのを見て自らが言葉を発することを自制した。
「暁、琴音は」
「寝かせました。一応睡眠薬を嗅がせてます」
「分かった」
いつもなら、睡眠薬を嗅がせることなどしない。だが、見張りもおらず、組員が一同に広間に集まるこの状況で、寝ているといえど琴葉を放置するのはリスクがある。
GPSをつけられていることを知っている琴葉が逃げるとは考えられないが、一応保険だ。
季龍と短いやり取りを済ませ、暁は彼の地位に似合う場所で腰かける。梨々香は、少し悩んだ後、伸洋の近くに腰を下ろした。
「話を戻すが、青海、話してくれ」
「はい。季龍さんたちはご存じの通り、自分は3年前から山にこもっていました。出てきたのはつい最近です。それで組に戻ったら若もお嬢もおらず、組員たちの見知った顔が半分はいないことがすぐに分かりました」
青海の言う組とは、季龍と梨々香の生家。つまり実家でもある組だ。
季龍と梨々香の表情に緊張が走る。