旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~




そんな中、彼女と出会ったのは、このホテルを継いでから5年後……今から1年ほど前のことだった。



その日は朝からブライダルの客が2組ほどおり、いつものようにタイムテーブル通り、挙式から披露宴と予定は進んでいた。



目に入ったのは、そのうちの1組の招待客のひとりであろう若い女性。

俺より少し年下だろうか、新婦の友人らしい彼女は朝から新婦に付き添い、受付から挙式でのブーケトスでの盛り上げ役、披露宴での余興や二次会の進行役……と1日中動き回っていたのを目にした。



新婦と余程仲の良い友人なのだろう。嬉しそうなその顔から、その日をいい日にしようという一生懸命さが伝わってきた。

ところが、二次会も終え、全ての客がホテルを出た後。ロビーの端でしゃがみ込む彼女を見つけた。



『お客様、大丈夫ですか?』



1日動き回って、疲れが出てしまったのだろうか。それとも飲みすぎたか?そう少し心配になり声をかけた。



『どうかされましたか?具合が悪いようでしたらあちらで……』

『い、いえ……大丈夫、です』

『そうおっしゃいましても、顔色が真っ青です』



大丈夫、その言葉が嘘だと簡単にわかるほど、その顔色は青ざめていた。

それでも強がり立ち上がろうとしたものの、ワンピースからのぞくその細い足に力は入らないのだろう。彼女はふらりとよろけてしまう。



……仕方ない。

客相手にしていい行為かはわからない。けれど、このまま帰すことのほうが躊躇われる。



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