旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「わっ!なにするんですか」
そして人の頭を乱すだけ乱して、玲央さんは手を離しコンビニの方向へ歩き出してしまう。
「……あと」
「あと?」
「さっきは言い過ぎた。大人げなかったって、反省してる。……ごめん」
顔を背けたまま、彼からこぼされた『ごめん』のひと言。それもまた思わぬ言葉で、驚きを隠せない。
……どうして?
どうして玲央さんが、『ごめん』なんて言うの?
違うでしょ。謝るのは、私でしょ。
勝手に触れたのは私なのに、彼の怒りは私が原因なのに。
どうして、心配して追いかけてきてくれたり、謝ったり、反省してる、なんて言うの。
驚き足を止めたままでいた私は、先を行く玲央さんを駆け足で追いかけると、そのシャツの袖をぐいっと引っ張った。
「うおっ!な、なんだよ」
驚き足を止める玲央さんに、私はそのシャツを握る手にぐっと力を込める。
「……ごめん、なさい」
「え?」
「玲央さんがピアニストだったって話、長谷川さんから聞きました。……なにも知らないのに、大切なピアノに勝手に触れたりして」
謝るべきは、あなたじゃない。勝手に触れた、私。
けれど玲央さんは伏し目がちにつぶやく。