旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「……で?杏璃さん、でしたっけ」
「え?あっ、はい!三浦杏璃です」
玲央さんからそれとなく私の話を聞いてはいたのだろう。彼はにこりともせず私の名前を口にする。
「えと……あなたは?」
「立花社長の秘書の檜山です。よろしくお願いします」
よろしく、と言いながらもそっけないその言い方から、それに気持ちが込められていないことは簡単に読み取れた。
事務的というか、なんというか……とっつきづらそうな人だ。
挨拶もそこそこに、「じゃあ行きましょうか」と歩き出してしまう彼に続くように、私もその場を歩き出した。
檜山さんに連れられやってきたのは、以前玲央さんに連れてきてもらった、イタリアンレストランの個室席。
そこにはビュッフェの新作メニューである、魚のムニエルや夏野菜のサラダ、冷製パスタなどがずらりと並べられていた。
「わ……美味しそー!これ本当にタダで食べていいんですか!?」
目をキラキラと輝かせながら席につく私に、檜山さんは冷静に頷き向かいに座る。
「えぇ。ですが量多いと思いますし、完食はしなくて構いません」
「あの、おかわりはしてもいいですか!?」
「は?」
意味がわからなそうに聞き返しながら、ジャケットの内ポケットからメモ帳とボールペンを取り出す。
ところが、試食を始めて数分後には、それまでクールだったその表情は完全に引きつっていた。
というのも、彼が『多いかも』と言っていた食事量を私は案の定もぐもぐと食べて、食べて、食べて……。
「んー!おいしー!」
あっという間に半分以上をたいらげた私に、彼はメモをする手も止めて、げんなりとした顔を見せた。