旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「す、すみません…」
その視線に、観念するようにチャペルへ入るとゆっくりと彼のもとへ近づいた。
「試食は終わったか?」
「はい。玲央さんも、打ち合わせ終わったんですか?」
「いや、先方の都合で夕方からになった。せっかく急いで持ってきたのに悪いな」
空いた時間を使って弾いていたのだろう。話しながら玲央さんはピアノの蓋を閉じて、椅子から立ち上がる。
「玲央さん、ピアノ上手ですね!惚れ惚れしちゃいました」
「上手って……お前なぁ。一応元プロだぞ」
「あ!そっか!」
無意識に褒めてしまったけれど、逆に失礼だったかも!
言われてから気づいて口をふさぐ私に、玲央さんは怒ることはなくおかしそうに小さく笑う。
「けどこのピアノは同じようなグランドピアノでもちょっと小ぶりなんですね。音もちょっと違うかも」
「あぁ。スタインウェイやベヒシュタインの高級ピアノはひとつひとつ手作りだからな、物によって音も響きも違うんだ」
ピアノの話しをしながら、真っ白なそのピアノを見つめる玲央さんの目は優しい。
「あのピアノって結構前から使ってるんですか?」
「そうだな。ピアノを始めた頃から使ってる」
ということは結構昔のものなんだ。
でもあれだけ綺麗だということは、きっと手入れがいい証拠なんだろうなぁ。
ガラス張りのチャペルには、頭上からの体温の輝きが降り注ぐ。ピアノの白い屋根に、光が反射して眩しさに目を細めた。