旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
意識しない、平常心、平常心……。
心に言い聞かせながら裏口のドアを開けると、そこでは半裸のままノワールを拭く玲央さんの姿。
「っと、おとなしくしてろって」
そう言いながら、ノワールに対して見せる笑顔はまるで子供のよう。これもまた、初めて見る顔だと思った。
そんな彼を見つめていると、つい胸はきゅんと音を立てる。
かわいいなぁ……って、きゅんってなに!きゅんって!
その感情を慌てて否定するものの、つい笑みがこぼれてしまう。
ノワールのこと、かわいがってるんだなぁ。長い毛を撫でるその手から、彼の優しさを感じた。
「玲央さん。タオルと服持ってきました」
「ん、あぁ。ありがとな」
そうタオルを受け取る彼をよく見てみれば、その体は鍛えられているようで、割れた腹筋としっかりした胸筋がたくましい。
「どうかしたか?」
「え!?いえなんでも!」
見惚れていたことを気づかれてしまわないように慌てて誤魔化す私に、玲央さんは意味がわからなそうにタオルで体を拭う。
さとられないように、次の話題、なにか話を……。
「あっ、そうだ!私、この後ちょっと買い物に行ってきますね」
「買い物?」
「洗剤とか、いろいろ切れかかっちゃってるので」
そう言うと、玲央さんは少し考えてから頷く。
「じゃあ俺も一緒に行く。車出してやるよ」
「え?いいんですか?」
「どうせ今日は1日予定ないしな」
へ?玲央さんが、一緒に買い物に?
思わぬ提案に驚いてしまうけれど、車を出してくれるというのなら甘えよう。
そんな気持ちから頷くと、私は玲央さんとノワールとともに一旦家の中へと戻っていった。