旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
黒いパンプスを履いて玄関から出ると、停まった車には、線の細そうなスーツ姿の男性……予想通りの檜山さんの姿がある。
開けられた助手席の窓から、彼に声をかけた。
「檜山さん、こんにちは」
「どうも。助手席どうぞ」
相変わらず愛想のない彼は、短く言うと視線で助手席を示す。
言われるがまま、助手席に乗りシートベルトを締めると、彼はゆっくりと車を走らせ出した。
先日同様、細い体をグレーのスーツに包んだ彼は無言のままアクセルを踏む。
「あの、玲央さんは私服でいいって言ってたんですけど、本当に大丈夫なんですか?」
「いいわけないじゃないですか。もちろんこれから買いに行きますよ」
「へ?」
にこりともせず言われた言葉に意味を問うように首を傾げるものの、彼はそれ以上のことは教えてくれずに前を向いたまま。
そしてしばらく走ったところで車は停められ、「降りてください」と彼に言われるがまま降りた。
見ればそこは、『simple dresser』と書かれた正面がガラス張りになっているアパレルショップ。
店頭には黒のロングドレスやピンクのミニ丈ワンピースなどが飾られていることからドレス専門店なのだろう。
「ドレスショップ……ですか?」
「えぇ。さっさと来てください」
そういえばさっき『これから買いに』って言っていた。
それってつまり、ドレスを買いに来たというわけで……。
えっ、でも、けど、と入るのを躊躇う足に、檜山さんは容赦なく私の腕を引っ張りお店へ入っていく。