長い夜には手をとって


「・・・うあ?」

 寒さではなくアルコールで顔を赤くして、伊織君がほぼ閉じかけている目を開けた。私を見てふにゃあと笑う。

「あ~・・・なぎ、こ、さーん・・・。ただいま~・・・」

「ただいまじゃないでしょ。ほらほらここで寝ないで!外で、人様の家の塀ですよ~!玄関上がってすぐなんだからさ、布団は。立って立って~!」

 彼の肩をバシバシ叩くと、うーうーと唸りながら伊織君はよろよろと立ち上がる。思わず支えたら、ずっしりと重たい体を預けられてよろめいた。

 お・・・重っ・・・!

「兄ちゃんだらしないでー。女の子の世話にならんとバシっとせんかいな~」

 東さんは既に家に上がって、そう言いながら笑っている。私は何とか玄関の中に伊織君を連れ込むと、彼の靴を脱がせながら東さんに噛みついた。

「もう~!こんなになるまで飲ませて~!東さんも伊織君も、すっごいお酒くさいですよ!」

「水臭いより酒臭いほうがマシやろ?」

「い、いやいや、そういう話じゃないですからっ!」

 ゲラゲラと笑う東さんが、凪子ちゃん水貰うで~と台所へいく。私は伊織君を叱咤激励して、何とかコートを脱がせたところだった。

「熱いお茶いれましょうか?ほら、伊織君もお水は飲んだほうがいいよ!明日起きたら二日酔いで死ぬ思いだよ~!」

「あ、ほな淹れて貰おかな。おおきに凪子ちゃん」

「はいはい」

 私は布団まで這いずった伊織君を放置して、台所へといく。もう、そろそろ寝ようかと思っていた矢先、酔っ払い二人の相手をする羽目になるなんて!


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