長い夜には手をとって


 朝、目覚ましをとめて起きる。

 寝ぼけたままで枕元の携帯のチェックをする。

 今日着る服を選んで鞄の中身を確認する。

 それを全部持って一階へと降り、洗面所へいくときに、それが目に入った。

 ――――――――ええっ!?何かがあそこに居る~っ!!!うっきゃ~・・・

 驚きで思わず叫びそうになったのを何とか飲み込んで、私は激しく音をたてる胸を手で押さえた。

「・・・あ、そうか」

 そうだ、伊織君が一階で寝てるんだった!

 台所の窓から入る朝の光では、玄関近くに布団を敷いた伊織君までは届かない。薄暗い部屋の奥に何かこんもりとしたものがあって、寝ぼけていた私を驚愕させたわけだ。

 私はまだ心臓をドキドキさせながら、何とか静かに洗面所へと駆け込んだ。

「・・・うわああああ~・・・びび、ビックリしたああああ~・・・・」

 はあ~、そうだったそうだった!昨日あんなに苦労したんじゃん!どうして忘れるかな、全く。

 いつもは一階で一つしかないエアコンをつけて台所の足元を暖めるためにある小さなストーブもつけて、テレビを観ながら着替えたりご飯を食べたりするのだ。だけど、今日はそういうわけにはいかない。

 相手は綾じゃないのだ。まさか成人男性の前でテレビを観ながらブラをつけるわけにはいかないではないの!いくら眠っているとはいっても、それは出来ない。

 仕方ないから人が一人入ったら身動きも難しいほどの狭い洗面所で着替えをする。えらく寒い。それに、くそ、ここでストッキングをはくのは無理かもっ・・・下手したら破れちゃうよこれ!


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