【coat.】



 白石くんは、私の目の前まで来て。


「ほんとに……いいの?」


 ぽつり、と呟いた。

 雪のように静かに降る言葉に。

 口が、動かなくて。

 頷くことしか、出来なかった。


「じゃあ……失礼します」

 緊張したその場に似付かわしくない事を言い、白石くんは両腕を広げた。


 2人の間の距離を限りなく狭くするため、もう一歩近づいて。


 腕の中に、私はすっぽり収まった。




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