俺様社長と付箋紙文通？！

それでもお昼時にはこのビルに勤めているＯＬさんたちがランチ代わりにとドーナツを買い求めにきてくれた。直径１５センチのうずまき型ドーナツ、棒がさしてあって形はロリポップキャンディ風。アイシングやチョコでカラフルにデコレーションされ、どれひとつとして同じものはない。目移りして選ぶのに時間がかかってしまうお客さんにこちらとしてはじれてしまうのだけれど、ワクワクしながら選ぶ時間を楽しんでもらうのも値段に入っているのだと思うことにしている。大ぶりとはいえ、たかだかドーナツ１個で５００円もするのだから。

そんなわけで、開店直後のこの時間はまだ誰も立ち寄らない。きっちりネクタイを締めたスーツ姿の男性や、裾がふふわふわと揺れるかわいいワンピの女性がいきかうのをワゴン車の中から眺めている。みんな都会的で洗練されていてかっこいい。このビルは５５階建てで、都内でも高く、そして新しいビルだ。地方民の私でも耳にしたことのある大企業も入っていて、上の階にいくほどその会社社員の平均年収は高くなるのだとか。このB.C. square TOKYOにはオフィスのほか、レストランやホテルもあるらしいが、私は入ったことはない。

あ、お客さんがきた。今日もたくさんの人を笑顔にしよう。そう思って、いらっしゃいませぇ、と明るく声をかけた。


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南向きに面した広いオフィス。イタリア製カッシーナ社のデスクに向こう側で秘書が手帳を広げている。

モンテグラッパのカフスを留め、デスクの上の書類を眺めた。おい、これ……プレゼンはうちの会議室でやるんじゃなかったのか？　向こうの会議室となると機材の移動はだれがやるんだ？？　坪単価８０万円だと？　一昨日の話では５５万円だったではないか。

わが設楽土地活用コンサルタントサービスは一年前に俺が立ち上げた会社だ。世界を股にかける不動産会社「ＳＩＴＡＲＡホールディングス」グループ傘下にある都市開発デベロッパーで、ショッピングモール建設を目的に土地を買収し、ショッピングモールに入れる企業を募り、あたりに住宅街や公共施設を誘致する、ちょっとした街を作るのが仕事だ。