俺様社長と付箋紙文通?!
そんなことよりきょうは気がかりなことがある。まだあのひとが来店していないのだ。黒づくめのバリキャリ女史だ。いつもは売り切れを心配して午前中にくるのに今日はまもなく売り切れだというのに来ていない。いちおうボスさんのためにお取り置きはしている。プレーン生地(かんぴょう煮入り)・ブラックチョコ(カカオポリフェノール2倍)・ひいらぎチョコ。大人の男性をターゲットにしたトッピングだ。
長テーブルにならんだドーナツが残らず売れて、私は片づけを始めた。今日はどうしたんだろう。出張で海外にでもいったんだろうか。それとも飽きてしまったんだろうか。
ふう、とため息をついてテーブルの足をたたんでいるとカツカツカツカツとヒールの音がした。噂をすればなんとやらだ。
「おわったの?」
「はい、でもボスさんにお取り置きしてあります。えっと、プレーン生地の……」
「なんでもいいわよ。これからつきあってもらうわよ」
「はい?」
「いいから。こっち」
「あの、え。ぎゃああああ!」
バリキャリ女史は私の二の腕をつかむとぐいっと引っ張った。このひとの握力、半端ない。厚手のサンタコートの上からこの力って。
ずりずりと引っ張られてビル前のタクシー乗り場に連れてこられた。開いた後部座席のドアからドンと押し込まれ、彼女もいっしょに乗り込んだ。
「銀座まで」
はい、と運転手が返事をすると同時に車が動いた。なに、なんで。銀座って。
「歩いたほうが早くないですか? タクシーってお金かかりますし」
「歩くより早いわ」
「それにミニスカサンタで銀座って」
「うるさいわね!」
ワンメーターでついたさきは6階建ての細長いビルの前だった。女史に続いて車を降りる。見上げると黒っぽいガラス張りの壁には向かいのビルのネオンが反射していた。1階はジュエリーショップのようだ。お店自体がまぶしいくらいに明るくて、それ自体がジュエリーみたいだった。なんか高そうな店だ。っていうか、ここ、芸能人御用達の有名店じゃない?
まさかこんな店に入るはずはあるまい。階上にあるテナントに用事があるのかと思いきや、彼女はジュエリーショップに入っていった。
「あの!」
「ぐずぐずしないで。どれでもいいから好きなの選んで」
「はい?」
ただしダイヤモンドよ、と彼女は髪をかき上げながら言った。
*−*−*
長テーブルにならんだドーナツが残らず売れて、私は片づけを始めた。今日はどうしたんだろう。出張で海外にでもいったんだろうか。それとも飽きてしまったんだろうか。
ふう、とため息をついてテーブルの足をたたんでいるとカツカツカツカツとヒールの音がした。噂をすればなんとやらだ。
「おわったの?」
「はい、でもボスさんにお取り置きしてあります。えっと、プレーン生地の……」
「なんでもいいわよ。これからつきあってもらうわよ」
「はい?」
「いいから。こっち」
「あの、え。ぎゃああああ!」
バリキャリ女史は私の二の腕をつかむとぐいっと引っ張った。このひとの握力、半端ない。厚手のサンタコートの上からこの力って。
ずりずりと引っ張られてビル前のタクシー乗り場に連れてこられた。開いた後部座席のドアからドンと押し込まれ、彼女もいっしょに乗り込んだ。
「銀座まで」
はい、と運転手が返事をすると同時に車が動いた。なに、なんで。銀座って。
「歩いたほうが早くないですか? タクシーってお金かかりますし」
「歩くより早いわ」
「それにミニスカサンタで銀座って」
「うるさいわね!」
ワンメーターでついたさきは6階建ての細長いビルの前だった。女史に続いて車を降りる。見上げると黒っぽいガラス張りの壁には向かいのビルのネオンが反射していた。1階はジュエリーショップのようだ。お店自体がまぶしいくらいに明るくて、それ自体がジュエリーみたいだった。なんか高そうな店だ。っていうか、ここ、芸能人御用達の有名店じゃない?
まさかこんな店に入るはずはあるまい。階上にあるテナントに用事があるのかと思いきや、彼女はジュエリーショップに入っていった。
「あの!」
「ぐずぐずしないで。どれでもいいから好きなの選んで」
「はい?」
ただしダイヤモンドよ、と彼女は髪をかき上げながら言った。
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