俺様社長と付箋紙文通?!
“今、選んでもらっています”


秘書宮下から数枚の画像が届いた。ガラスのショーケースに鼻をぺしゃんこになるまで押し付けて商品を見ている画像、店員にネックレスをつけてもらって首をすくめている画像、唇を突き出して姿見をのぞき込んでる画像。胸まであるおさげ髪を垂らして、相変わらず田舎臭いのだが、どこか品がある。陶器のような白く滑らかな肌、長いまつげ、適度に厚みのある唇。つやのあるデコルテ、細く長い指。くびれのある腰、ひょろりとした脚、しまった足首。あの体にシルクのドレスを着せたらいい線いくのではないか。

パソコンの画面にくいつきすぎて首が痛くなった。何を考えているんだ俺は。伸びをしたら再度メールが届いた。


“こちらが気にったようですが、いかがですか”


画面には彼女の正面顔。にっこりと笑うがどこかぎこちない。遠慮がちに首をかしげているところもかわいいではないか。白いデコルテの上に輝くネックレス。ひとつぶの大きなダイヤのまわりを小さなダイヤが取り囲んでいる。チェーンの部分にも数センチおきにメレダイヤが施されている。サンフラワーシリーズか。あのヒマワリを模したデザインは宝飾店創業時からつづく伝統あるシリーズだ。いろんなジュエリーに展開していて、有名人や芸能人も購入していると聞く。しかし、似合う。きれいに収まったそれを見て、まるでそのネックレスが彼女のために作られたかのような錯覚を起こした。


“構わん。現金決済でそのまま持たせろ。あとついでにピアスと指輪もセットで購入しておけ”
“4桁超えますが?”
“何度言わせる。構わん”
“かしこまりました”


1時間ほどして宮下は帰ってきた。


「設楽社長、購入した品物は現金で支払ってネックレスとピアスは彼女に持たせました。肌身離さず身に着けるように言いつけました」
「指輪はなかったのか?」
「ありましたが刻印に1週間ほどかかるというのでショップに預けてあります」
「刻印? なんのだ」
「贈る側から贈られるほうへのイニシャルです」
「はああ? そ、そんなものいらん」
「いえ。イニシャル刻印はあのショップの伝統で、あの刻印がないと偽物扱いになりますので」
「ふん、まあいい」
「それから」
「まだ何かあるのか?」
「社長用にもひとつ買ってまいりました」


宮下はそう言って俺に小さな箱を差し出した。



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