俺様社長と付箋紙文通？！

でも今日は違う。こんな私もＯＬさんに混じるのだ。ビルの管理を任されている田中さんというおじさんから無料チケットをもらった。初日にご挨拶に伺ったときに、もし玄関で不審者を見つけたら連絡してほしい、というお願いと引き換えだった。私は快く引き受けた。なんと田中さんもとちぎの出身でなんだかほっとしたから。なぜとちぎ出身だと分かったのかというと語尾が上がる話し方をしていたから。だからぁ↑、だよねぇ↑、でしょぉ？↑、と思わず首を曲げて天を仰ぎたくなる口調に私は察知した。田中さんとちぎでしょ↑と聞いたら、ンだ↑↑、と恥ずかしそうにうなずいた。

そんなわけで、今日はランチに行こうと思っている。チケットにランチは１４時オーダーストップと書かれているから、ドーナツ販売が落ち着く１３時半になったら食事に行くと決めている。

気おくれしてしまうけど、おいしいものには目がない私。頑張ってる自分へのご褒美として、少しだけ羽を伸ばそう。三つ折りになったビルのショップリストを広げてウハウハと眺めた。



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社長室のある４１階から下界にいくのは少々手間がかかる。アッパーフロアのエレベーターは２７階までしかない。下界レストランのある６、７階行くためには２７階で一度降りてＩＤカードでゲートを通過し、ロビー階直通のエレベーターで１階まで降り、さらに６、７階に行く低層階エレベーターに乗る。乗り換えが２度も必要だ。めんどくさいのだ。なのでアッパーフロアの連中はアッパーフロアから直通でいける上の会員制ＶＩＰラウンジ「スクエア・きらり」か、高級レストラン「スタースクエア東京」で食べることが多い。あとは出前だ。

それに下界のレストランはイタリアン、和食、洋食とレパートリーが単調なうえに混んでいる。テレビやネットの宣伝効果が効いて、近隣のビルに勤めるＯＬ連中が連日押し寄せているはいるが。

定例会議を終えて社長室にもどると秘書の宮下がどや顔で待ち構えていた。会計報告など経理部長に任せておけばいいのに、２か月に一度は顔を合わせろと秘書宮下が勝手にセッティングした。俺がトンズラするのを予測していたようだ。