俺様社長と付箋紙文通?!
宮下とロビー階直通のエレベーターに乗り込む。昇降するあいだのひまつぶしで、ドア上のモニターには企業CMが流れる。ぼんやり眺めていると「四川料理光琳、7階にオープン!」の文字が浮かんだ。オレンジの大きな炎の上でダイナミックに揺れる鉄製の中華鍋。そのなかでおおぶりのエビが舞っていた。CMに音声はないが、あたかもジュワーっという音が耳の中で響くようだった。皿に盛られたエビはチリソースをまとい、赤く輝いている。ごくり、と喉が鳴る。
「食事はどこでするんだ?」
「クロサワ会計事務所の黒沢所長が和食とみ川の個室をご予約してくださいましたが、ほかのものがよろしかったですか」
「この光琳というのは」
「先週オープンしたばかりの四川中華です。かきたま入りのエビチリが人気のようです」
かきたま入りのエビチリか。CMはもう次の企業のPRを映していたが、俺の脳内にはエビチリが焼き付いていた。口のなかにひろがるごま油とエビの香ばしい味、舌をピリリと刺激するチリソース。ああ、もうだめだ。どうにもエビチリが食べたい。
「変更されますか?」
「ああ。頼む」
ポーン、とエレベーターが電子音を鳴らし、目の前の扉が開いた。低層階エレベーターの前に移動して到着を待つ。俺の背後で、ひゃあ、とか、しーっ、とかひそひそ声が聞こえたが、ここのOLたちがなにかのうわさ話をしているのだろう。隣で宮下はタブレットを操作し、中華の予約をしようとしている。
「設楽社長、光琳は予約できないとのことです」
「できない?」
「オープン景気の混雑緩和のため、今月いっぱいは予約は受けないとのことです」
「オーナーの俺でもか?」
「到着したら光琳オーナーに掛け合います」
今度は少し甲高い電子音で低層階エレベーターが到着した。ほかの客とともに乗り込む。ドア上のモニターにはおなじく光琳のCMが流れていて、エビチリの映像は俺の頭のなかにしこりを残す。
エレベーターが動いて2階で止まる。コンビニとシアトル系コーヒーショップがある。乗降が終わって、今度は3階に止まる。そして4階も。さっさと食事を済ませてオフィスに戻りたい俺はイラっとした。4階ぐらいなら階段で移動しろ。エスカレーターもあるだろうが。
「食事はどこでするんだ?」
「クロサワ会計事務所の黒沢所長が和食とみ川の個室をご予約してくださいましたが、ほかのものがよろしかったですか」
「この光琳というのは」
「先週オープンしたばかりの四川中華です。かきたま入りのエビチリが人気のようです」
かきたま入りのエビチリか。CMはもう次の企業のPRを映していたが、俺の脳内にはエビチリが焼き付いていた。口のなかにひろがるごま油とエビの香ばしい味、舌をピリリと刺激するチリソース。ああ、もうだめだ。どうにもエビチリが食べたい。
「変更されますか?」
「ああ。頼む」
ポーン、とエレベーターが電子音を鳴らし、目の前の扉が開いた。低層階エレベーターの前に移動して到着を待つ。俺の背後で、ひゃあ、とか、しーっ、とかひそひそ声が聞こえたが、ここのOLたちがなにかのうわさ話をしているのだろう。隣で宮下はタブレットを操作し、中華の予約をしようとしている。
「設楽社長、光琳は予約できないとのことです」
「できない?」
「オープン景気の混雑緩和のため、今月いっぱいは予約は受けないとのことです」
「オーナーの俺でもか?」
「到着したら光琳オーナーに掛け合います」
今度は少し甲高い電子音で低層階エレベーターが到着した。ほかの客とともに乗り込む。ドア上のモニターにはおなじく光琳のCMが流れていて、エビチリの映像は俺の頭のなかにしこりを残す。
エレベーターが動いて2階で止まる。コンビニとシアトル系コーヒーショップがある。乗降が終わって、今度は3階に止まる。そして4階も。さっさと食事を済ませてオフィスに戻りたい俺はイラっとした。4階ぐらいなら階段で移動しろ。エスカレーターもあるだろうが。