少女に野獣。
「どこも、怪我してないかい?」


「痛いところは?」


「寒かっただろう。これを着なさい」


そう言って、着ていたコートを頭から被せてくれた


「ッ……ヒクッ……ンッ…」


涙で顔はよく分からないけど、優しい声のトーンと、暖かい男の人の体温で、寒さと寂しさで限界だった私は、抱きしめる知らない人の胸で子どものように泣いてしまった


散々泣いた後、ずっと背中を摩ってくれていた男性の胸に手を付いて離れた


また、黒髪みたいに知らない場所へ連れていかれるのは嫌です…


でも、、どうして私の名前を…知っているのでしょうか…?


「ずっと、探してたんだよ」


………私、を……?


「そうだよ。美依恋ちゃんを探してた」


………どうして…


私の…心が読めるの…?!


「ククッ……顔に書いてあるからね。さぁ、此処は寒いだろう?それに、足も怪我してる。手当てしてあげるから、おいで?」


そう言って腕を広げている彼に、どうしてだか、嫌だとか不審だとか、そんな事は思えなくて…


それでもやっぱり、知らない人だから…


手放しで飛び込む勇気は、私には無いです…



< 21 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop