社長の甘い罠~いつしか当たり前に~ + 番外編
私は大きく息を吸い込んで深呼吸した。



「花菜?」



その様子に不安そうな顔をする健人さんを見つめる。



「ただ………。」


「ん?」


「健人さんと付き合い始めてから、一度も恋人らしい事をしてないなって。」


「恋人らしい?」



眉間に皺を寄せる健人さんから視線を逸らして、私は歩き始めた。


私の隣を歩き始める健人さんに疑問を投げ掛ける。



「つまり………一度もキスとかした事ないかなって事です。」


「…………ああ。」


「今のは忘れてください。」



クスクスと笑う健人さんに頬が染まるのを感じる。



「やっぱり言うんじゃなかった。」


「俺は聞けて嬉しいけど?」



笑う健人さんに急ぎ足で会社に向かった。



「花菜、拗ねるなって。」


「健人さん、面白がってますよね?」


「いや。可愛いなって。」


「可愛くないです。」



私達は夜中なのに、元気に言い合いながら会社に戻った。
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